グッチが発表した最新「Lido campaign」は、単なるリゾート広告ではない。そこにあるのは、“完璧に演出されたバカンス”ではなく、陽射しに焼けた午後や、海風に乱れるシャツ、ボートの上で過ごす静かな時間——そんな現実の夏に近い空気感だ。
フォトグラファーのJim Goldbergは、今季のグッチを極めて自然体に切り取った。出演するDaisy Edgar-Jones、Aliocha Schneider、David Jonssonも、モデルというより、イタリアの海辺で休日を過ごす友人たちのように映る。笑い声、波音、庭園に差し込む夕暮れの光。そのどれもが、ラグジュアリーを誇張するためではなく、“夏の記憶”として存在している。
今回のキャンペーンで特に印象的なのが、「グッチ Softbit」シリーズだ。
従来の構築的なバッグとは異なり、Softbitはあえて力の抜けたフォルムを採用。大きめのHalf Horsebit hardwareと、自然に身体へ沿うしなやかなシルエットによって、クラシックなグッチ codesを残しながらも、どこか90年代のhobo bagを思わせるムードを漂わせる。
中でもforest green suedeモデルは、深みのあるスエード素材とダークブラウンのライニングによって、静かな存在感を放つ。ラグジュアリーバッグでありながら、“日常の中で使い込まれる美しさ”を前提にデザインされている点が、今のグッチらしい。
新作「Gigi loafers」にも、その空気感は続いている。
象徴的なHorsebitディテールを継承しつつ、シューズ全体はよりソフトに再構築。スエード素材、やや細長いalmond toe、そして折りたたみ可能なヒールによって、クラシックローファー特有の緊張感を和らげている。
近年のグッチコピーが得意としていた“装飾性”とは異なり、今季はむしろ余白が美しい。リゾートでも都市でも自然に馴染む、その曖昧さが魅力になっている。
「グッチコピー Re-Web sneaker」もまた、今季を象徴する存在だ。
クラシックなWeb stripeを残しながら、フォルムはヴィンテージのバスケットシューズを思わせるレトロな設計に。GG canvas、レザー、スエードを重ねた質感は、スポーティでありながら決してカジュアルになりすぎない。
キャンペーン全体を包むブルーグラデーションとも美しくリンクし、oversized toteやraffia素材のバッグ、crochetディテールの小物とともに、“海辺のグッチ”という新しいイメージを完成させている。
今回のLido campaignで印象的なのは、服そのものの軽さだ。
lightweight cotton、GG Monogram denim、Flora motif。どれもグッチのアイコンではあるが、今季はそれらを強く主張するのではなく、夏の日常へ自然に溶け込ませている。
オーバーサイズのシャツ、少し色褪せたデニム、ラフに肩へ掛けたバッグ。そこには“完璧なスタイリング”よりも、“心地よさ”が優先されている。
いまのグッチコピーは、ラグジュアリーを遠い存在として見せようとしていない。むしろ、海風で少し皺になった服や、砂のついたローファーまで含めて、美しいと思わせる。
このLido campaignは、その変化を静かに物語っている。